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Ultra-High Coating Deposition Efficiency System

超高塗着塗装システム

高度化したエア霧化で塗着効率85%を実現!
日本のCNに貢献するプラスチック部品用の超高塗着塗装技術 

Achieving 85% Coating deposition efficiency with advanced air atomization!

The Ultra-High Coating Technology for Plastic Parts Contributing to Japan's Carbon Neutrality.

経済産業省のGo-Tech事業の支援を受けて開発

経済産業省の令和4年度『成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)』補助金を受け、専用の塗装ガン、塗料(シンナー)、塗装ロボットを統合した超高塗着効率塗装システムとして大学、塗装機器メーカー、塗料メーカーと共同開発し、塗着効率85%以上を実現しました。

1. 塗装を取り巻く社会環境

 塗装は、錆や紫外線による製品の劣化を防いて耐用年数(ライフサイクル)を飛躍的に延長したり、色やツヤ及び機能を与えて製品の付加価値を上げることができる一方で、使用される塗料は主に石油化学製品のため、製造から廃棄までのCO₂発生が大きな社会問題となっています。

 

 2015年のパリ協定以降、世界はCO₂発生を抑制する大きな変革の中にあり、2050年までにエネルギー源としての石油の採掘や使用を止めようとしています。エネルギー需要によって採掘されている石油が使われなくなるということは、副産物ともいえる塗料もいずれ石油化学製品でないものに置き換わっていくことを意味します。その過程においては原料としての希少性が高まって、塗料は現在のような価格での取引はできなくなると予想されています。もちろん、塗料メーカー各社は石油由来ではない塗料の開発に取り組んでいますが、完全に置き換えるには、まだ解決すべき課題は多くあります。

 

しかし、地球環境に負荷がない新世代の塗料が普及するまでの間も、カーボンニュートラル(CN)の実現に向かっている世界からはCO₂の削減・抑制を求められていて、自動車産業界では2035年がひとつの達成期限と目されています。そして自動車産業を主要顧客のひとつとする塗装業界もCO₂の削減・抑制という要求に応えていく必要がありますが、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指している自動車メーカーも多いので中小企業でも自動車部品を塗装している工場なら避けて通れない課題です。そして、その解決方法として、塗着効率の向上は極めて重要なアプローチです。無駄になる塗料の量が減れば、塗料(材料)やVOC(揮発性有機化合物)を抑えることができますし、CO₂排出量をおさえると同時に、ブーススラッジや、VOCが引き起こす光化学オキシダントを減らすこともできます。もちろん高騰していく原材料費を低減できることは企業として利益率の改善にもつながります。

<今後さらに塗装工場に求められてくる課題>

NET ZERO

2.従来技術の問題点と課題

 工業塗装において、とりわけプラスチック部品の塗装現場では、塗膜の仕上がり品質や作業性により液体塗料を微粒化して塗布するスプレー塗装が採用されています。液体塗料の微粒化にはいくつかの原理的方策があって、従来最も普及しているエア霧化方式は、液体塗料を霧化するために高圧の圧縮空気をノズルの先から塗料とともに吐出することによって、均質で外観評価レベルの高い塗膜を形成します。品質面や作業性は良いですが、環境負荷の視点で見ると塗着効率が低く無駄にしている塗料が多すぎます。

 

従来最も一般的な技術であるエア霧化方式の塗着効率が低い原因は、音速域に達するという高圧高速の圧縮空気が被塗物近傍では被塗物に当たって跳ね返ってしまって、塗料ミストを飛散させるので塗料の付着を阻害してしまうためです。特にプラスチック部品の塗装では丁寧に作業しても40~50%程度が塗着効率の上限で、平均的な塗装工場では20~30%程度でしかないと言われています。この塗着効率の低さが従来技術の大きな問題点です。

 

CO₂の排出量を削減・抑制して環境負荷を少なくするためには、被塗物に塗着せず無駄になる塗料を極限まで減らすことで塗料製造時のエネルギー消費量を削減するとともに、無駄になった塗料が産業廃棄物として処分される量を少なくする必要があります。無駄になる塗料を減らすため、塗着効率を従来の約2倍である85~90%まで向上させるために、圧縮空気の吐出により発生する跳ね返りがない方式によって新技術を構築する必要があります。弊社の取り組みは、品質と作業性のために環境負荷を軽視してきた従来技術を覆す開発です。

<従来技術の技術的課題>

●従来のエア霧化塗装は塗着効率が低い

従来のエア霧化塗装は、霧化のために高い圧力または風量の多いエアを使っているため圧縮空気によって塗料が跳ね返えってしまい、塗料の半分以上を無駄にしている。

●静電塗装はプラスチック部品に不向き

静電塗装(エアや回転で微粒化した塗料を、静電気を使って被塗物に付着させる技術)による高塗着塗装は、複雑な立体形状で絶縁体であるプラスチック部品の塗装には不向きである。

●エアレス霧化塗装は外観評価が低い

エアレス霧化塗装は厚く塗ることを目的として使われており、エア霧化塗装より塗着効率は向上するが、 微細な膜厚調整や美観表現が難しい。

3.新技術の検証方法

 塗装に用いられた塗料の固形物質量と製品に塗着した塗料の固形物質量の比を百分率で示した値が塗着効率です。弊社の技術開発では広く一般的に使われているこの算出式を用いて測定し検証を行いました。

塗着効率の算出式

 塗着効率を向上させるパラメータとしては、吹き付け角度、パターン幅、吐出量、霧化圧、運行速度、ガン距離などがあります。実験の一例として、吹き付け角度を90度(吐出方向に対し被塗物の塗装面が直角)のときに43%だった塗着効率が、角度だけ45度にすると26%まで塗着効率は大きく低下しました。(図1/木下稔夫 塗装技術, Vol.46, No.9, p57-64, 2007年)

吹き付け角度 90度
吹き付け角度 45度

図1 調整可能なパラメータ例(角度)

4.高度化したエア霧化で塗着効率85%を実現!

 6つの各パラメータを調整して実験を繰り返すことで、塗着効率を向上させるための種々の知見を得ましたが、従来の塗装機器、塗料、塗装ロボットでは、塗着効率は60%程度までしか向上させることができませんでした。そこで、新たに塗装機器、塗料、塗装ロボットシステムを、経済産業省の令和4年度『成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)』補助金を受けて、久保井塗装株式会社(弊社)・東京都立大学・株式会社明治機械製作所・武蔵塗料株式会社が共同開発し(図2)、塗着効率85%以上を実現しました(図3)。

 

開発した『超高塗着塗装システム』は、85%の高い塗着効率を実現しながら、静電気を使わない高度化したエア霧化のためプラスチック部品を塗ることができ、エア霧化だからこそ実現できる高い外観品質を持ち、メタリック塗装やマット塗装など、幅広い塗料に対応できます。

また、従来のスプレー塗装に比べてブースの風量を抑えることができるため騒音低減効果があり、廃棄塗料や消費電力を減らす省エネ効果があるためカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現に貢献できます。

<超高塗着塗装システムの特徴>

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 この取り組みによって、産・学・官の三位一体と同時に、産の中でも技法・塗料・機器が三位一体になる事で微粒化と塗着効率の相反する課題を両立させることに成功したと言えます。

塗着効率のグラフ

5.今後の展開

 開発した超高塗着塗装システムの技術は、日本国内をはじめ各国での特許取得を目指しています(出願済)。また、このシステムは完成したプロトモデルを元に、2025年末を目処に実用化モデルを完成させて、市場展開を行う予定です。さらに、2026年夏を目処に埼玉県狭山市の久保井塗装株式会社敷地内(右写真の現工場の裏手、駐車場利用地付近)に新工場を建設して、外来者へのデモンストレーションができるようにする予定です。

新工場建設予定地

超高塗着塗装システムについてのお問い合わせはこちらまで。

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